「リツイート」も場合によっては違法になる?
先日,「「イイネ」をすると名誉毀損にあたる!?」というトピックを掲載しましたが,今度は,ツイッターの「リツイート」をすることが不法行為にあたるかどうかが争われた裁判について取り上げたいと思います。
この裁判は,東京地方裁判所平成26年12月24日判決(ウエストロー・ジャパン2014WLJPCA12248028。以下「本件裁判」)です。
本件裁判で問題となった行為は,判決文によれば(他人が投稿した)「「ポスター破りに唾かけ,車破壊,名誉毀損,業務妨害,証拠隠滅・犯人隠避,ストーカー,強姦,強制猥褻,不正アクセス,詐欺,恐喝,集団暴行,飲酒運転etc…お前らはこんだけやらかしてるんだから,無傷でいられるわけないでしょ」とのツイート」を,自分のアカウントから「ツイッターに再投稿(以下「リツイート」という。)し」た,というものです。
もとのツイートである,「ポスター破りに唾かけ,車破壊,名誉毀損,業務妨害,証拠隠滅・犯人隠避,ストーカー,強姦,強制猥褻,不正アクセス,詐欺,恐喝,集団暴行,飲酒運転etc…お前らはこんだけやらかしてる(以下略)」という内容が,対象者の社会的評価を低下させるに足るものであり,これが名誉毀損にあたることは争いがないところだと思います。
そうすると,上記のような内容のツイートをリツイートするという行為が,ツイート投稿者と同様,「(社会的評価を低下させるに足る)事実を摘示した」といえるかどうか,が不法行為にあたるかどうかの判断の分かれ目になります。
リツイートした投稿者からすれば,「他人の文章を引用(リツイート)しただけで,自分で積極的に情報を作成・発信した訳ではないから,「事実の摘示」にはあたらない」と言いたいところです。
本件裁判において,訴えられた側は「リツイートは,原告X2自身が発信したものでない旨主張し,それを前提に,被告Y7及び被告Y6の反訴請求が不法な請求又は二重提訴である」というように,自分が発信したものではなく,したがって損害賠償責任は負わない,と主張しました。
しかしながら,このような主張に対して裁判所は,「しかし,リツイートも,ツイートをそのまま自身のツイッターに掲載する点で,自身の発言と同様に扱われるものであり,原告X2の発言行為とみるべきであるから,リツイートについて名誉毀損等が成立するとして損害賠償請求をすることが直ちに不法な請求として違法になるものではなく,また,リツイートは元となるツイートと同内容ではあるものの,別の発言行為であるから元のツイートについて不法行為が成立するとして賠償請求がされていても,リツイートした人物に対し同様に不法行為が成立するとして賠償請求をすることが二重提訴となるものでもない」というように,「自身の発言と同様に扱われるものであり,原告X2の発言行為とみるべき」として,「自分が発信したものではない」という主張を認めませんでした。
なお,東京地方裁判所平成27年11月25日判決(ウエストロー・ジャパン2015WLJPCA11258016)において,裁判所は,「リツイートは,既存の文章を引用形式により発信する主体的な表現行為としての性質を有するといえるから,本件ツイート等の名誉毀損性の有無を判断するに際しては,リツイートに係る部分をも判断対象に含めるのが相当」と述べています。
以上の裁判例に照らせば,名誉毀損やプライバシー侵害等にあたるツイートをリツイートした場合,そのリツイート行為も不法行為にあたるとして損害賠償責任を負う可能性がある,といえるでしょう(「記事そのものを引用・発信する」という形式のもの(例えば,フェイスブックにおける「シェア」)については,同様のことが言えると思います)。
情報を,広範囲の人と低コストで瞬時に共有できることがインターネット(ソーシャルネットワークサービス)の利点ではありますが,情報の内容によっては,共有行為(リツイートやシェア等)が他人の権利を侵害することもある,ということを頭の片隅に置いておいたほうがよいと思います。