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いつまでも残すべき?「犯罪者」という負の刻印。

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NHKニュースサイトに,「振り込め詐欺で有罪 検索結果の削除命じる仮処分」という記事が掲載されていました。

記事によれば,「振り込め詐欺で過去に有罪が確定した男性が,10年以上たってもインターネットの検索で当時の記事が表示されるのはプライバシーの侵害だと訴えた仮処分について,東京地方裁判所がグーグルに検索結果の削除を命じる決定を出した」ということだそうです。

過去の犯罪報道に関する記事(多くは,事件当時の報道が匿名掲示板上にコピーされているといった類のものです)が,いつまでもインターネット上に残っているので何とかしてほしい,というご相談を受けることがよくあります。

この場合に取るべき方法としては,1)掲示板管理者等に対して記事自体の削除を求める,あるいは,2)グーグル等の検索サービス提供会社に対して記事が検索結果として表示されないよう求める,というものが考えられます。

記事の数がそれほど多くない場合には1)の方法によることが多いですが,記事の数が極めて多く,個々の掲示板管理者に削除請求をするのはコスト・時間的に現実的でないという場合には,2)の方法によったほうがよいといえます。

いずれの場合であっても,記事の削除(検索結果からの削除)は,「前科等にかかわる事実を公表されない法的利益(及び,前科等にかかわる事実の公表によって,新しく形成している社会生活の平穏を害されその更生を妨げられない利益)」と,「前科等にかかわる事実につき,実名を使用して著作物で公表する必要性」とを比較して,前者が上回る場合に認められるとされています(参照:「ノンフィクション『逆転』事件」(最高裁判所平成6年2月8日判決(民集48巻2号149頁)))。

また,上記判例は具体的な考慮要素として,「その後の生活状況のみならず,事件それ自体の歴史的又は社会的な意義,その当事者の重要性,その者の社会的活動及びその影響力について,その著作物の目的,性格等に照らした実名使用の意義及び必要性をも併せて判断すべき」と述べています。

このような判断基準に照らせば,本件の場合は,確かに振込詐欺という組織的な犯罪類型であるとはいえ,歴史的な意義があるとまでは言えないでしょうし,10年以上が経過し既に執行猶予期間も満了しており,検索結果として表示されるのは(おそらく)匿名掲示板上にコピーされた報道記事であるといったことを考えれば,公表されない利益のほうが上回るということになると思われ,検索結果の削除を認めた東京地裁の判断は妥当といえましょう。

ただし,削除を命じられたグーグルのほうは,NHK記事によれば「「利用者の知る権利のため裁判を求めたい」として,正式な裁判で争う方針です。」ということですから,その帰趨が注目されるところです。

関連エントリ:Googleで検索できてしまう犯罪歴。更生を妨げる現実。

 


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