震災とデマ
4月14日夜,熊本県を震源とする最大震度7という地震が発生し,大きな被害が生じました。お亡くなりになられた方々に,心からお悔やみを申し上げるとともに,被災された皆様が一日も早く普段どおりの生活に戻ることができるよう,お祈り申し上げます。
この,悲しむべき災害に遭った方々の不安を煽るかのように,「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」といった極めて悪質なデマがインターネット上を飛び交うという事態が発生しました(例えばこちらにまとめがあります)。
1923年(大正12年)に発生した関東大震災の際には,同様のデマによって多くの朝鮮人の人々が犠牲になったと言われています。
それから100年近くが経とうとしている現代においてもなお,当時とほとんど変わらない内容のデマが流されたということに,人間が持つ抜きがたい差別意識の深さに慄然とせざるを得ません。
しかし他方で,例えば大阪市においては,平成28年1月18日,「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」が公布されるなど,差別的な表現を抑制していこうという動きが生じていることも確かです。
もっとも,「表現」に対する法的な規制には,対象となることをおそれて表現を自粛してしまうという「副作用」(萎縮効果,チリングエフェクト)があることにも注意が必要です。
これは,対象となる表現をどれほど厳密に定義したとしても,解釈の余地を完全に排除することは不可能ですから,必然的に伴う副作用といえるでしょう。
私達が今後,「ヘイトスピーチ」のような差別的表現とどのように向き合っていくべきであるのか,大阪市の条例は,表現の自由に対する規制のあり方を占う,ひとつの試金石になるといえるでしょう。