誹謗中傷されたとき,どこの裁判所に訴えればいい?
さて,プロバイダ責任制限法に関する問題として,今回は,「管轄」について取り上げたいと思います。
「管轄」とは一体なんのこと?
管轄というのは,訴えを提起する場合に,その訴えについて「どこの裁判所が審理,判断することになっているか」についての取決めです。
つまり,どこでも好きな裁判所に訴えを提起することができる訳ではなく,「民事訴訟法」という法律によって,どこの裁判所に訴えを提起しなければならないかが定められているのです。
具体的にはどのように管轄が決められている?
では,管轄がどのように定められているかについて,みてみましょう。
民事訴訟法第4条1項に,
「訴えは,被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。」
との規定があり,
同2項に
「人の普通裁判籍は,住所により,日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により,日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。」
同4項に
「法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は,その主たる事務所又は営業所により,事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。」
との規定があります。
つまり,被告(=訴えられる方)の住所(または居所等)を管轄する裁判所に訴えを提起することになります。
ただし,民事訴訟法には他にも管轄について定めた規定があります。
民事訴訟法5条は「次の各号に掲げる訴えは,それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。」と規定しており,被告の普通裁判籍以外にも管轄を認めています。
例えば,同条9号では「不法行為に関する訴え」について「不法行為があった地」を管轄する裁判所に管轄が認められていますが,誹謗中傷やプライバシー侵害などを内容とする記事の投稿は「不法行為」にあたりますから,記事によって精神的苦痛を受けたことに関する損害賠償請求は「不法行為に関する訴え」となり,「不法行為があった地」を管轄する裁判所に訴訟を提起することができます。
そして,不法行為があった地には「結果発生地」も含むというのが一般的な考え方であり,「被害者がインターネットで記事を見た場所」において結果が発生していると考えれば,被害者の住所地を管轄する裁判所に管轄が認められる,ということになります。
また,同条1号で,「財産権上の訴え」については,「義務履行地」(※)を管轄する裁判所に管轄が認められています。
不法行為に基づき損害賠償を求めることも「財産権上の訴え」に含まれると考えられていますが,この場合,損害賠償として金銭を受け取る方,すなわち被害者の住所地が「義務履行地」となります。
したがって,被害者は,自分の住所を管轄する裁判所に訴訟を提起することができる,ということになります。
相手が外国法人だったらどうなるの?
さて,ここまでお読みになって,「あれ,ツイッターとかグーグルって,外国の会社なんじゃないの?日本で裁判起こせるの?」と思った方がいらっしゃるかもしれません。
そうです。訴える相手が外国の会社である場合,「そもそも日本の裁判所で訴えを審理・判断することができるのか」という点が問題となります。
この点については,次回の記事で取り上げたいと思いますので,1週間後をお楽しみに!