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フェイスブック上で誹謗中傷された。日本で訴えることはできる?

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さて,今回の記事では,前回予告した「訴える相手が外国の会社である場合,そもそも日本の裁判所で訴えを審理・判断することができるのか」という点を取り上げたいと思います。

 


 

なぜ裁判できるかどうかが問題になるのか?

例えば,フェイスブック上に誹謗中傷記事が投稿されてしまったとき。

誰が記事を投稿したかを特定するためには,プロバイダ責任制限法に基づき,まず,IPアドレス等の発信者情報について開示するようフェイスブック社に求めることになります。

さて,ここでひとつ注意しなければいけないのは,フェイスブック社の利用規約(Statement of Rights and Responsibilities)では,「米国またはカナダに居住しているか、事業の主たる拠点を持っている場合、本規約は利用者とFacebook, Inc.の間で締結されます。それ以外の場合、本規約は利用者とFacebook Ireland Limitedの間で締結されます。「弊社」とはFacebook, Inc.またはFacebook Ireland Limitedのうちいずれか該当するものを指します。」(規約18.その他)となっている点です。

上記規約の規定により,日本のユーザーについては,Facebook Ireland Limitedとの間で利用規約が締結されることになり,したがって,フェイスブックの利用に関する権利義務は,日本のユーザーとの関係ではアイルランドに所在するFacebook Ireland Limitedが有している,ということになります。

※仮に,日本法人が存在する場合でも,当該日本法人がサービスを提供する権限を有しているとは限りません。実際,グーグル日本法人を被告として検索結果の削除を求めた裁判では,検索エンジンを管理運営する権限を有しているのはグーグル米国法人であるという(ことをひとつの)理由として,請求が棄却されています(参考:http://www.47news.jp/CN/201506/CN2015060501001834.html)。

ともあれ,外国の会社が相手になるわけですが,裁判というのは「司法権」という国家権力・作用のひとつですから,司法権が帰属するところの国家,その主権が及ぶ範囲における行使が前提となります。

そうすると,日本国(の領土)外に存在する外国の会社に対して,日本という国家の主権(司法権)を及ぼす,すなわち,裁判の一方当事者として裁判所に出廷させ,判決に服させることができるのか,ということが問題になるわけです。

このように,外国の会社(あるいは個人)を相手とする裁判を日本の裁判所に提起することができるのか(言い換えれば,どの国の裁判所に訴えることができるのか)という問題を,「国際裁判管轄権(の問題)」といいます。

 

アイルランドの会社であるFacebook Ireland Limitedを日本で訴えることができる?

結論からいえば,Facebook Ireland Limitedを日本(の裁判所)で訴えることは可能です。

それは,平成24年4月から施行された改正民事訴訟法において新設された,以下の規定があるためです。

民事訴訟法第3条の3 次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定めるときは、日本の裁判所に提起することができる。

(略)

五  日本において事業を行う者(日本において取引を継続してする外国会社(会社法 (平成十七年法律第八十六号)第二条第二号 に規定する外国会社をいう。)を含む。)に対する訴え 当該訴えがその者の日本における業務に関するものであるとき。

(略)

つまり,外国の会社が,日本国内(のユーザー)を対象とする事業を営んでいる場合に,その事業に関して裁判を提起するときは,日本の裁判所に管轄が認められる,ということが規定されたのです。

この規定を前提とした場合,フェイスブック(https://ja-jp.facebook.com/)は,日本語で提供されているサービスですから,当然,日本国内のユーザーを対象としたものといえ,Facebook Ireland Limitedは「日本において事業を行う者」であると評価してよいでしょう。

そして,フェイスブック上で誹謗中傷されたことを理由として,Facebook Ireland Limitedを相手に発信者情報開示請求することは,「その者の日本における業務に関するもの(訴え)」にあたるといえます。

なお,「業務に関するもの」というのは,フェイスブック社がユーザーに対して負う債務の履行を求めたり、その不履行責任を追及したりといった,「契約に基づく権利義務に関する紛争」についての訴えが典型的なものとして考えられますが,これを強調(重視)すれば,プロバイダ責任制限法によって創設された権利である「発信者情報開示請求権」は,フェイスブック社の業務に関するものとはいえない,という考え方もあり得るところです。

しかしながら,フェイスブックが提供するサービスに関連して誹謗中傷という権利侵害が生じ,それに伴って発信者情報開示請求権が認められるという関係からすれば,発信者情報開示請求訴訟も「業務に関するもの」と解釈すべきであると考えられます(また,日本の裁判所の管轄を認めないとすれば,誹謗中傷された被害者の権利救済はおよそ不可能となりますから,この点からも管轄を認めるべきといえます)。

 


いかがでしたでしょうか。

たかが管轄,されど管轄。

私達,法律の専門家にとっては,「どこで裁判をするか(できるか)」という問題は,地味ながらも非常に重要な問題なのです。

 

 


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