LINEの内容,第三者に公開してもいいの?
(少し遅くなりましたが)明けましておめでとうございます。本日から引き続きトピックを更新していきたいと思います。昨年同様,ご高覧のほどどうぞよろしくお願いいたします。
さて,先日来,芸能人同士がLINEでやり取りした内容が週刊誌に掲載された,ということが話題になっています。
LINEでの1対1のやり取りの場合,その内容はやり取りしている当人にしか分からないものですから,それを勝手に公開してしまうことは,「プライバシーを侵害するのではないか」という点が問題となりえます。
トピック「日本の裁判で最初に認められたプライバシー侵害」でも触れたように,
個人に関する一定の情報が公表された場合において,それが,
ア)私生活上の事実またはそれらしく受け取られるおそれのある事柄であること
イ)公表された者の立場にたってみた場合,一般人の感覚に照らせば公表を望まないと認められる事柄であること
ウ)いまだ一般の人に知られていない事柄であること
という要件を満たすときには,当該情報の公表はプライバシーの侵害にあたるとされています。
また,手紙を書籍に掲載したという件に関する裁判例ですが,「私信は特定の相手だけに思想や感情を伝えることを目的としており,もともと公開を予定していないものであるから,その性質上当然に私生活に属する事柄であって,その内容がどのようなものであれ,一般人の感受性を基準にすれば公開を欲しないものと解すべきものである」と判断したものがあります(高松高等裁判所平成8年4月26日判タ926号207頁)。
以上に照らすと,LINEでのやり取りを当人の承諾を得ずに公開することは,プライバシーを侵害することになると考えられます。
なお,プライバシー侵害は,「私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄」を公表した場合にも成立するので,公表した内容が真実であるかどうかは,プライバシー侵害の成否には関係ありません。
ただし,プライバシーを侵害する行為であっても,一定の場合にはその違法性が阻却(侵害が正当化)され,公表した者が法的責任を負わないときがあります。
例えば,選挙によって選ばれた議員については,私生活上の行状等であってもその議員の政治家としての資質,能力を判断するために必要なものと考えられる場合には,公表が正当化されることがあります。
また,公表の目的,必要性や,公表行為の態様,被害者(情報を公表された者)が受けた不利益の程度等を総合的にみて,公表する利益が優越すると判断されるときも,公表が正当化されることがあります。例えば,前科・前歴については,公表が正当化される場合もあります(トピック「裁判例からみるプライバシー権あれこれ2」で詳しく触れていますので,ご興味がある方はこちらもご覧ください)。
芸能人の場合,一般人に比べて「このくらいは我慢すべき」としてプライバシー侵害が許容されるように思われがちですが,今回,問題となったような件については,たとえ芸能人であっても公表を甘受すべきとは言えず,プライバシー侵害が成立することになると思います。