インターネット上の誹謗中傷。なんとしても告訴したい!
インターネット上で誹謗中傷の被害にあった方から,「刑事告訴したいんですが,できますか?」というご相談を受けることがあります。
投稿された記事の内容が,刑法上の犯罪(名誉毀損罪,侮辱罪など)にあたる場合,投稿した人物を告訴するという選択肢はもちろんあり得ます(「プライバシー侵害」は犯罪にはあたらないため,告訴することはできません。)
告訴を考える際に注意しなければならないのは,「告訴期限」と「公訴時効」の問題です。
告訴期限について
刑事訴訟法235条1項本文
親告罪の告訴は,犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。
「親告罪」というのは,被害者からの告訴がなければ起訴することができない犯罪のことをいいますが,名誉毀損罪,侮辱罪は親告罪とされています(刑法232条1項)。
したがって,インターネット上で名誉毀損,侮辱されたという場合,投稿者を知った日から6か月以内に告訴をする必要があります。
ただし,「犯人を知った日」というのは,犯罪が終了してから知った場合をいい,犯罪継続中に知った場合,6か月という告訴期間は進行しないとされています。
インターネット上の名誉毀損等の場合,問題となる記事が掲載されている限りは犯罪は終了しておらず,その間に投稿者を知った場合は告訴期間が進行しないとした裁判例があります(大阪高判平成16年4月22日判タ1169号316頁)。
公訴時効
それから,「公訴時効」というのは,刑事訴訟法250条に定めがあり,一定の期間を経過すると検察官による起訴ができなくなるというものです。
例えば,名誉毀損罪は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」と規定されています(刑法230条1項)が,刑事訴訟法250条2項6号で「長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪」の公訴時効は「3年」と定められています。
したがって,インターネット上で名誉毀損された場合に,投稿されてから3年を経過した場合には公訴時効により起訴ができなくなる,ということになります。
ただし,刑事訴訟法253条1項において「時効は,犯罪行為が終つた時から進行する」と規定されており,上述したように記事が掲載されている限り犯罪は終了していないという考え方を前提にすれば,記事が投稿されてから3年経過していたとしても,当該記事がまだ残っている場合,あるいは,削除されてから3年が経過していない場合には,公訴時効は完成しておらず,起訴は可能と考える余地があるでしょう。