ビデオ公開に1億1500万ドル(約128億円)の損害賠償!
プロレスラーのハルク・ホーガン氏といえば,新日本プロレスで数多くの試合に参戦し,必殺技「アックスボンバー」や,漫画「キン肉マン」に登場するネプチューンマンのモデルにもなった等,日本でも有名ですね。
朝日新聞平成28年3月19日付き記事「ハルク・ホーガン氏への賠償128億円判決 ビデオ流出」によれば,知人女性と性行為をしている様子を撮影した動画が,インターネット上のメディアサイトで無断公開されたとして,ホーガン氏(本名は,Terrence Gene Bolleaですが,以後も「ホーガン氏」で統一します)がサイト運営会社やその創設者等に損害賠償を求めた裁判で,1億1500万ドル(約128億円。1ドル111.5円)の支払いが命じられたとのことです。
なお,Tampa Bay Times記事”Jury awards Hulk Hogan $115 million in Gawker sex-tape lawsuit”(March 18, 2016 掲載)によれば,ホーガン氏の動画は,平成25年4月に削除されるまでの6か月間に約250万人に閲覧され,動画が投稿されているウェブページには約540万人が訪れたそうですから,相当の人数が動画を閲覧したようです。
それにしても,100億円を超える損害賠償というのは,日本の感覚からするとおよそ考えられない数字と言わざるを得ません。私の経験では,プライバシー侵害が認められた場合の慰謝料は多くが30万円から50万円といったところで,100万円以上となったケースはほとんどありません。
アメリカ合衆国には,「懲罰的損害賠償」(punitive damages)といって,不法行為の加害者に対する懲罰の趣旨で,また,将来における同種行為の抑止を図ることを目的として,被害者において実際に生じた損害を超える額の賠償が命じられることがあります。
ホーガン氏の場合も,1億1500万ドルという額にこの懲罰的損害賠償が含まれているのかと思ったのですが,上記Tampa Bay Times記事には””We’re not finished yet,” he said, an allusion to the punitive damages Bollea intends to seek from the same jury next week. If they find in his favor, the already large award could grow even greater.”とあり,懲罰的損害賠償についてはこれから審理・判断がなされることになっているようです。
上記判決を受け,ホーガン氏の代理人をつとめたデービッド・ヒューストン弁護士は「これはホーガン氏にとってだけでなく,「タブロイドジャーナリズム」によって犠牲になってきた全ての人々にとっての勝利だ」(This is not only his victory today, but also anyone else who’s been victimized by tabloid journalism.)と述べました。
最近,芸能人のプライバシーを暴露する記事が話題になっていますが,もし日本でもアメリカ合衆国並の損害賠償が命じられるとなった場合,それでも変わらずに記事を掲載し続けるのか,興味のあるところです。