写真をSNSで勝手に公開された!これって許されるの?
他人の写真を使って投稿されたTwitterのつぶやき
先日,朝日新聞デジタル版に「ツイッターで画像悪用し偽投稿 IPアドレス開示命じる」という記事がありました。
夫妻が長女(1)と昨年8月、東京都渋谷区であった集団的自衛権をめぐるデモに参加した際に夫妻がツイッターに投稿した長女の写真が別の利用者に使われた。「安保反対国会前デモに連れていかれた、我が孫、聖羅が熱中症で還(かえ)らぬ人に」「あの嫁はゆるせません」などと、長女の祖父母になりすました内容だったという。
IPアドレス等の「発信者情報」について開示が認められるには,対象者の権利が(インターネット上で流通した情報によって)侵害されたことが必要ですが,今回のケースでは写真が無断で使われたということで,「肖像権侵害」が主張されたようですね。
「肖像権」というのは,「プライバシー」や「著作権」などに比べればあまり馴染みがないかもしれませんが,「勝手に写真を撮られたり,それを公表されたりしない権利」のことです。
最高裁判所は,刑事裁判の被告人につき,法廷での容貌などを撮影した行為,及びその写真を週刊誌に掲載して公表した行為が不法行為にあたるかが争われた裁判で,「人は,みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」,「人は,自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当」としています(最高裁判所平成17年11月10日判決民集59巻9号2428頁)。
TwitterやFabebookなどで公開した写真にも肖像権はあるのか?
ところで,今回のケースでは,ツイッターで公表されたお子さんの写真は,もともと親御さん自身がツイッターに投稿した写真であり,それを第三者が勝手に使った,という経緯のようです。
そうすると,「いったん自分(正確には,親御さんですが)が公表したものなのだから,肖像権侵害にはあたらないのではないか?」との疑問がでてくるかもしれません。
確かに,そのような考え方にも一理ありそうな気がしますね。
しかし,いちど公表した以上は(本人の承諾を得ないで)どのように使われたとしても文句が言えない,というのも何だかおかしい気がします。
自分の情報を公開するにあたっての態様・媒体・タイミング等については,本人の意思が最大限尊重されるべきであり,いったん公開したからといって,他人が勝手に使うことまで承諾したと考えることはできないと考えるべきではないでしょうか。
例えば,自分のブログに自分の顔写真をアップした場合,それは,「自分のブログ」という媒体に限ってのことであって,他人がその写真を勝手にインターネット上で使用することまで承諾した訳ではない,と考えるべきでしょう。
過去の裁判例では,どのように判示されたのか。
ある裁判例では「人が私生活上の一場面での撮影及び公表を承諾したからといって,これに係る肖像権を放棄し,いかなる公表のされ方をしようともすべて承諾したことにならないことはいうまでもない。そして,人が自らの写真を雑誌等に掲載することを承諾するか否かを判断する上で,その目的,態様,時期等を含む公表の具体的諸条件は,重要な要素であり,これと著しく異なる用い方をされた場合には,承諾の範囲を超え,改めて被撮影者の承諾を得ることを要する場合もあると考えられる。」と判示されています(東京地方裁判所平成15年4月24日判決)。
今回のケースでは,お子さんの写真が,「熱中症で還(かえ)らぬ人に」などと悪質な虚偽内容の文章とともにツイッターに投稿されたということですから,当人がこのような使用を承諾するはずもなく,肖像権侵害にあたるということになりましょう。
インターネットで情報を発信するにあたっては,「第三者による悪意の利用」に十分注意しなければならない,ということを考えさせられた事件でした。