Twitterに容姿がうつった写真を無断で投稿。肖像権侵害で開示を命じる判決。
NHKによれば,「ツイッター上に娘が死亡したなどとうその書き込みをされたうえ、写真を無断で転用され、肖像権を侵害されたとして、新潟市の家族がインターネットの接続業者に投稿者の情報の開示などを求めていた裁判で、新潟地方裁判所は30日、業者に開示を命じる判決を言い渡しました。」とのことです(NHKニュースウェブ平成28年9月30日「ネット肖像権 業者に開示命令」より)。
一般に,容姿がうつった写真を,本人の承諾を得ないでインターネット上に投稿し,不特定多数が見られる状態にすることは,「肖像権」を侵害する不法行為であり,損害賠償責任を負うことになります(以前のトピックでも取り上げています。「Twitterで勝手に自分の写真を投稿され,氏名・高校名等が記載されたケースで170万円の損害賠償命令」,「写真をSNSで勝手に公開された!これって許されるの?」)。
この判決で注目すべきは,「たとえ家族がネットに写真を掲載していたとしても,不特定多数への公開を黙認しているものではない」と判断していることです。
なぜなら,本人が(今回のケースでは親御さんですが)インターネット上に投稿した場合には,「不特定多数に閲覧されることを自ら容認していた」ということで,肖像権は侵害されていないという考え方もあり得るからです。
しかし,インターネット上に投稿して公開した場合であっても,投稿者としては,公開する媒体や範囲等について全く頓着しないということはないでしょうし,まして,今回のケースのように,「安全保障関連法に反対するデモに無理やり連れて行かれ熱中症で死亡したなどとうその書き込み」のために写真が使われるというのは,およそ本人が承諾するはずもない態様ですから,「本人が公開している」というだけでは,違法性を阻却する理由にはならないと考えるのが妥当でしょう。
同様の判断をした裁判例として,例えば,東京地方裁判所平成22年4月28日判決(ウエストロー・ジャパン2010WLJPCA04288009)においては,写真を無断で公開(週刊誌に掲載)した被告が,「本件各写真は,原告が自らのホームページ上において広く第三者に公開していた写真をそのまま転載したものであるから,原告は,本件各写真について肖像権を放棄していたというべきである」として,不法行為の成立を争いましたが,裁判所は,「原告自身のホームページと本件雑誌1,2では,対象とする読者が異なり,また,写真の掲載により原告が受ける不利益も著しく異なるから,原告が,本件各写真をホームページ上で掲載していたとしても,本件雑誌1,2にこれを転載することまで容認し,肖像権を放棄していたとは認められない。」と,「読者(閲覧者)が異なること」,「掲載による不利益も異なること」を理由に,不法行為の成立を認め,写真を掲載した週刊誌の出版社に損害賠償を命じました。