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刑事訴訟の記録をインターネットに掲載した男性が逮捕。

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サンスポ・コムに「自らが被告となった暴行事件の裁判の証拠書類をブログに掲載したとして、刑事訴訟法違反(開示証拠の目的外使用)の疑いで、(略)容疑者を逮捕」という記事が掲載されていました(H28.10.11付きサンスポ・コム「自らが被告となった裁判書類をブログに掲載容疑 52歳男を逮捕」)。


 

まず,問題となる刑事訴訟法の条文を確認してみましょう。

 

刑事訴訟法

281条の4

1 被告人若しくは弁護人・・・又はこれらであつた者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。

一  当該被告事件の審理その他の当該被告事件に係る裁判のための審理

二  当該被告事件に関する次に掲げる手続

イ 第一編第十六章の規定による費用の補償の手続

ロ 第三百四十九条第一項の請求があつた場合の手続

ハ 第三百五十条の請求があつた場合の手続

ニ 上訴権回復の請求の手続

ホ 再審の請求の手続

ヘ 非常上告の手続

ト 第五百条第一項の申立ての手続

チ 第五百二条の申立ての手続

リ 刑事補償法 の規定による補償の請求の手続

2 (略)

281条の5

1 被告人又は被告人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、前条第一項各号に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

2 弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。以下この項において同じ。)又は弁護人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、対価として財産上の利益その他の利益を得る目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときも、前項と同様とする。

 

つまり,刑事裁判において被告人あるいは弁護人に検察側から開示された証拠については,裁判手続き等で使用する目的以外の目的で他人に渡したり,インターネット上に掲載したりすると,刑事訴訟法違反ということになってしまいます。

 

今回のケースで,逮捕された被疑者は「自分の考えを知ってもらいたかった」と話しているということなので,上記刑事訴訟法が認めている「次に掲げる手続又はその準備に使用する目的」には該当しないといえるでしょう。

同様に,開示された証拠の目的外使用であるとして刑事訴訟法違反に問われたケースとしては,公務執行妨害罪に問われた被告人が,実況見分調書等の証拠を動画投稿・配信サイト「ユーチューブ」に投稿したことについて,証拠の目的外使用にあたるとして当該被告人が逮捕されたというものがあります(H25.3.8付き日本経済新聞「証拠の写しを投稿 会社役員を刑訴法違反容疑で逮捕 」)。

 

また,証拠の目的外使用には問われなかったものの,弁護士が「警察による取調べの様子を録画したDVDをテレビ局に提供したこと」につき,当該弁護士が検察から懲戒請求されたというケースもあります(H26.1.17付きヤフーニュース「「品位」を問われるべきはどちらか~証拠の「目的外使用」で弁護士会の審尋開かれる」 なお,懲戒請求申立てを受けた大阪弁護士会は,当該弁護士に対する懲戒処分はしないという決定をしました(H26.2.8付き日本経済新聞「弁護士の映像提供問題 異議申し立て大阪地検行わず」))。

なお,この「開示された証拠の目的外使用を規制すること」については,裁判員制度が導入される際に立法化されたものですが,刑事訴訟法の条文を改正する法律案が国会に提出された際,日本弁護士連合会は「証拠の内容を問わず、また公開の法廷に提出された証拠か否かを問わず一律に使用禁止の対象としていることから、その使用理由が如何に正当なものであったとしても、審理の準備以外の目的で開示証拠を使用することは全て禁止されることになり、被告人の防御権を不当に制約することは勿論、裁判公開原則や報道の自由とも抵触するおそれが大きい」などとして,改正に反対する声明(H16.4.9付き「刑訴法改正法案から証拠の目的外使用条項の削除を求める会長声明」)を出しています(しかし,改正はなされてしまいました)。

 

確かに,上記日弁連会長声明で言及されている「東京区検の検察官が被疑者の供述調書を改ざんした事案を報じ、改ざんされた部分の調書の写しを掲載している。こうした報道が、捜査機関の重大な違法行為を国民に明らかにし、刑事手続の公正を確保するため大きな意義を持つことは明らかであるが、改正案によれば、このような報道は行うことができないこととなる。」のように,一定の場合には,刑事裁判における証拠を第三者の目に触れさせることが必要な場合もあると思います。

「証拠の目的外使用を規制すること」が,捜査機関による不正,不適切な捜査・行為を隠蔽するための手段として使われることのないよう,監視・チェックしていくことが肝要といえるでしょう。

 


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