ストーカー規制法の改正・施行
平成29年1月3日,昨年の国会で成立した「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(ストーカー規制法)改正法案が施行され,SNSを利用したメッセージの送信等についても同法の規制対象となりました(日本経済新聞H29.1.3付き「改正ストーカー法施行 ネット上も規制対象に 」など)。
改正前のストーカー規制法においては,「電子メールの送信」は規制対象になっていたものの,ブログのコメント欄への書込み,LINE等のSNSを利用したメッセージの送信等については対象外でした。
そのため,これらについても対象とすべきという意見が従前から根強かったところ,昨年(平成28年)5月に東京都小金井市で発生した,音楽活動をしていた女性がファンの男性からツイッターに執拗な書込みを受けた挙句,刃物で刺されて重傷を追った事件が契機となり,この度の改正につながったものです。
【主な改正点】(参考:参議院法制局ウェブサイト http://houseikyoku.sangiin.go.jp/bill/pdf/h28-102gy.pdf)
1 規制対象行為の拡大
・相手から拒まれたにもかかわらず,連続して,
①SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を用いてメッセージを送信すること
②ブログ 等のページにコメントを書き込むこと
・相手の住居,勤務先,通学先等(通常所在する場所)の付近をみだりにうろつくこと
が規制対象に。
2 情報提供の禁止
・ストーカー行為をするおそれがあることを知りながら,(ストーカー行為の対象となる者の)氏名,住所等の情報を提供することが禁止に。
3 禁止命令制度の見直し(未施行。公布日から起算して6か月を経過した日(=平成29年6月14日)から施行予定)
・規制対象行為をした者に対し,警察による事前の警告を経ずに公安委員会の禁止命令が出せるように。
4 罰則の強化
・ストーカー行為に関し,「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」を,「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に引上げ。
・ストーカー行為についての禁止命令違反に関し,「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」を,「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」に引上げ。
・その他の禁止命令違反に関し,「50万円以下の罰金」を,「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」に引上げ。
5 非親告罪化
・被害者の告訴がない場合でも,起訴が可能に。
なお,ストーカー規制法の対象となる行為は,「特定の者に対する恋愛感情その他の好意感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で,「その特定の者又はその家族等(配偶者,直系もしくは同居の親族など社会生活において密接な関係を有する者)に対してなされる」ものです。
したがって,恋愛感情・怨恨感情を充足させるという目的がない場合であれば,例えば「拒否されたにもかかわらず連続してメッセージを送った」からといって,同法の規制対象となる訳ではありません。
とはいえ,相手が嫌がっている,拒否しているのに,連続してメッセージを送ったりコメントを書き込んだりするというのは,コミュニケーションのあり方として適切とはいえないでしょう。
「文字だけ」のコミュニケーションは,ともするとヒートアップしがちですから,メッセージを送信したり,書込みを投稿する前に,不必要に相手を非難したり,中傷したりするものになっていないか,もう一度ゆっくり読み直してみる,ということが必要かと思います。